高井の奇妙な体験

すきなことをずっといつまでも。

キュビスムとジョジョの奇妙な関係

昨年末に荒木先生がNHK Eテレ日曜美術館」にご出演されました。

以前にも、

「いのち輝く家族の肖像 ~モーリス・ドニ~(2011年)」

「静かな絵画革命~宮廷画家ベラスケスの実験~(2018年)」

エッシャー 無限性の彼方へ(2019年)」

メトロポリタン美術館展(2022年)」

にご出演されていて、今回で5回目ですかね。

まなざしのヒント キュビスム

初回放送日:2023年12月24日

美術の楽しみ方を展覧会場で実践的に学ぶ「まなざしのヒント」。5回目のテーマは「キュビスム」。20世紀初めにピカソとブラックによって生み出された「キュビスム」は、西洋絵画の伝統的な表現から、現代アートへとつながる視覚表現の大革命。その一方で観念的で理解が難しいという側面も。パリ・ポンピドゥーセンターの名品を教材に、美術史が専門の三浦篤さんと漫画家の荒木飛呂彦さんが、鑑賞のポイントと魅力をひも解く。

 

出典:

www.nhk.jp

現代アートを語る上では欠かせないキュビスムを教えてくださる先生として招かれた荒木先生。美術について門外漢な私は生徒になりきって試聴しました。

キュビスム初期の作品はカクカクしていて暗めで奥深い印象です。パブロ・ピカソの《肘掛け椅子に座る女性》を観ながら必死に女性の目鼻口を見つけようと試みるもどこがどうなってるのかよくわからんッ!泣

しかし、出演者の感想をもとにキュビスムを紐解いていくと、だんだんと絵画に視線が奪われていくのがわかります。荒木先生も「飾った時に威力を発揮して家を支配する絵がキュビスム」とおっしゃっていて、確かに斬新で摩訶不思議な絵だからじっと観てしまって目が離せないなこれは!と思わず共感しました。

しかも、キュビスムは対象そのものの美しさをそのまま絵にしていないからか、画家自身の芸術センスが最も強調されているのでその奇妙さの虜になっていきます。

 

また、番組内では『ザ・ジョジョランズ』の一コマが登場しました。風景と鳥、雲、人間を一緒に描きたい、分解するように断片化して再構成するというキュビスムの手法を取り入れたい、そう思って描いたそうです。頭と右肘の鳥も腹筋の外壁模様も上手く溶け込んでいて圧巻の一コマです。キュビスムの子孫と言われるのも納得ですし、荒木先生の吸収力にはあっぱれ!です。

こちらの敵キャラクターチャーミングマンは空気中の塵となって自然や物体と同化し、気づいた時にはもう近くにいて襲撃してくるというなんとも恐ろしい能力を持っています。塵は肉眼じゃ見られないですもんね。私を含め鈍感なモブは再起不能どころか即時でお空に旅立つことでしょう。

出典:荒木飛呂彦. 『ジョジョの奇妙な冒険 第9部 ザ・ジョジョランズ』 10話. 『ウルトラジャンプ』 2024年1月特大号. 集英社, 2023年, p.215.

 

他にもキュビスム手法が使われた絵があるのかな?と思って探してみたところ、それらしき絵が見つかりました。ウルトラジャンプに移籍した7部5巻以降の荒木先生の画力が頂点に近づいている頃から増えている気がします。例えばこちらはどうでしょうか。白樺と馬の境界が曖昧になって奥行きの感覚が失われています。敢えて主人公ジョニィ・ジョースターを背景と同化させて、相棒のジャイロ・ツェペリを前面に持ってきて目立たせるその意図は物語の進行と関連していると思います。

キュビスム自体冒険であり実験なので、絵柄を進化させ世界観をも広げていく荒木先生の方向性と完全に一致して相性がいいのかもしれません。今後はジョルジュ・ブラックのように素材感や質感を絵に盛り込む可能性があったりして?と思うと非常に楽しみです。

出典:荒木飛呂彦. 『ジョジョの奇妙な冒険 第7部 スティール・ボール・ラン』 9巻. 集英社, 2006年, 表紙.

 

そして、日曜美術館で紹介されたキュビスムの作品は現在京都で鑑賞することができます。日本では50年ぶりの開催です。パリのポンピドゥー・センターの改修時期と重なっていることから約130点出品されるそうです。もしかして次の開催は50年後?生きている間に見られないかも?焦る気持ちが私を京都市京セラ美術館へ駆り立てました。

撮影場所:京都市京セラ美術館 撮影日:2024年4月 撮影者:高井ほた

cubisme.exhn.jp

 

展示されている絵画は一部を除き写真撮影OKだったので、いいな!と思った絵だけを厳選して撮影してきました。こちらは近くで見ると物体の濃淡や光と影が幾何学的図形で描かれています。一方、遠くから見るとそれらの境界線がなくなってお互いが溶け合って写実的に見えます。静物画はなんだかほっこりとあったかい気分になるので好きです。

撮影場所:京都市京セラ美術館 撮影日:2024年4月 撮影者:高井ほた

出典:ジャンヌ・リジ=ルソー《1キロの砂糖のある静物》1915年頃, 京都市京セラ美術館展示

 

ん?これは……。クイーン『ボヘミアン・ラプソディ』のミュージックビデオっぽい雰囲気だし、『ゴーストバスターズ』のマシュマロマンっぽいのもいるし、他にも見覚えがあるような。なんだか構図が似ている気がするので比較してみました。右下の右向きさんがスタープラチナの腕に居るような?その腕に鼻のような鋭角があるような?ヘンテコなこじつけばかりしていると異議を唱えられそうなのでこれでお開きにします笑

(左の画像)

撮影場所:京都市京セラ美術館 撮影日:2024年4月 撮影者:高井ほた

出典:エレーヌ・エッティンゲン《無題》1920年頃, 京都市京セラ美術館展示

(右の画像)

出典:荒木飛呂彦. 『ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース』 5巻. 集英社, 1990年, 表紙.

 

こうして振り返ると、実際に美術館へ足を運びキュビスム作品を鑑賞したことは良い選択だったと心から感じます。

現実を再現するという絵画の常識から解き放たれて、画家たちの自由な表現が可能になった芸術運動〈キュビスム〉。

この運動は私たちにも同じようにアートを楽しむ自由を与えてくれます。すなわち、アートの正解不正解を心配することなく心のままに感じたことを楽しむことができるのです。

また、彼らが描いた多面的な世界は私たちにも多角的な視点で物事を見る重要性を伝えています。そして、彼らのアートは色や形を超えて私たちの想像力をかき立て新しい発見をする喜びを与えてくれます。

以上のことから、アートを通じて私たちの心と思考に自由をもたらす素晴らしい芸術運動〈キュビスム〉は、まさに私自身にとっても美の革命でした。美術館での絵画鑑賞は難易度が高くて近寄りがたい印象でしたが、キュビスムによってそれは破壊されました。美術鑑賞って楽しい!美術館また行こう!という気持ちにさせてくれました。

今回きっかけをくださった日曜美術館、荒木先生、本当にありがとうございました。

 

 

さて、キュビスム展を2周してしっかり堪能した後は京都観光です。

 

まずはこちら。「京うどん 生蕎麦 岡北」さん。京セラ美術館から徒歩5分のところにあるので美術鑑賞後の食事に最適です。人気店ということもありたくさんの人が訪れますが、そのような状況でも丁寧かつ手早く料理が提供される素晴らしいお店でした。

注文したのは「天とじうどん」。つるっと艶々で美しい麺。飲み干したくなるほどに旨味の調和が取れたお出汁。熱々の海老天をはふはふ。お出汁をたっぷり含んだきめ細かくてふわふわなかき玉。無論、完飲完食しました。

「キンシ正宗」さんの「水尾柚子サイダー」と「梅サイダー」も美味しかったです。熱々になった口内をさっぱりさせてくれます。

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撮影場所:京うどん 生蕎麦 岡北 撮影日:2024年4月 撮影者:高井ほた

 

続きましては、食後のデザートに「バンス洋菓子店」さんへ。どこか懐かしくて静かで落ち着く店内。それでいて、昨今のレトロブームに惹かれた若者も訪れるようなお店です。地元のお年を召したマダムが一人でティータイムを満喫していてほんわか気分になりました。

「レアチーズ」を始めとしたケーキたちは控えめながらもお味は繊細で上品でした。まるで奥ゆかしい京都の人をそのまま表しているような。焼き菓子もトリュフも甘さ控えめで素材の味が引き立っていて美味しかったです。流行に流されず伝統的な製法を守り続けているからこそずっと地域に愛されているわけですね。

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撮影場所:バンス洋菓子店 撮影日:2024年4月 撮影者:高井ほた

 

そして恒例の寄り道ターイム!散策中に大好物のジェラートを発見してしまいました。「京都ジェラート&カフェ えびす町」さん。さっき洋菓子食べたよね?いいえ、問題ありません。ジェラートはお腹を満たすというより心を満たすものですから。むしろウェルカムです。

毎月変わるフレーバーから注文したのは「ピスタチオとフランボワーズ・ルビーチョコ」「ジャンドゥイヤとあまおう」。ピスタチオがまんまピスタチオで香りが強くて濃厚で感動しました。他のフレーバーも同様、こんなに素材の味が強いジェラートは指折り数えるほどしか出会ったことがなくて口に入れるたびに美味しい〜!を連呼してしまいます。惜しみながら頂いたジェラートのあとにはクレマが細かい本格的なエスプレッソをお共に癒し空間でたっぷりくつろぎました。

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撮影場所:京都ジェラート&カフェ えびす町 撮影日:2024年4月 撮影者:高井ほた

 

お土産には、カルビーポテトチップス関西だしじょうゆとオジカソースのフレンチドレッシング、ツバメソースのウスターソースを買いました。京都って調味料が豊富なんですね。そして、京都駅で手に入れたいもの。そう、それは「志津屋 」さんのカルネ。訪日外国人のおじさまもどれにしようか悩むほど美味しそうなパンたちでいっぱいでした。

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締めは名古屋駅の住よしできしめんを食べて。きしめん王国の民なのに初めて食べました笑

 

美しいアートを観て、美しい景色を見ながら歩いて、美しいグルメを食べて、大満足な一日でした。